「めぐりめぐる」music videoが出来るまで~その3

2019年7月9日夜、僕たちは飯面氏のアトリエにお邪魔し半年ぶりに再会した。アトリエ用にマンションの一室を借りられてある。部屋には例のサンドアートをする為の装置が置いてあるのだが、部屋の印象はまず”白い”と思った。
別に何をイメージしていた訳でもなかったのだが、部屋のカラーや蛍光灯の明かりなど、白かった。

飯面氏の印象は初めてお会いした時のまま何も変わらなかった。彼女がこれまで生み出した作品や携わった企画を見せてもらった。企業とコラボレーションした時の話や、舞台版ナルトに参加した時の事。手塚治虫記念館で放送されているサンドアートの話や、実際のその映像も見せてもらったし、今回の自分たちのように曲に映像を付けた作品も見せてもらった。


飯面氏の根本には「映画」、「映像」、「アニメーション」が常にある。今でこそ動画などで砂をどんどん変化させていって画を作り上げていく映像作品が多く見られるが、2000年代の前半ではまだ、砂を専門にしている人は飯面氏一人だった。昨今では今言ったような”パフォーマンス”を楽しむ映像作品が多くなり、彼女のもとにもパフォーマンスの依頼が来る事が増えているという。
だが彼女の中に、”即興”という意味でのパフォーマンスは存在しない。パフォーマンスの根本にも「映像」という発想がある為だ。彼女はサンドアーティストの前にアニメーターなのであり、事実飯面氏の作品は”アニメーション作品”である場面が多い。あくまでも”アニメーション”で、砂にそれ独特の動きをさせている。

飯面氏の作品例


その他のアーティストの作品例

アトリエで色々と話した後は近くの居酒屋へ連れて行ってくれた。(お勧めの餃子のお店は残念ながら閉まっていた。後日、閉店していたと分かるのだが。)そこで僕は、パフォーマンスとして見せた方が面白いでしょうという話をした。コマ送りのアニメーションだけでは砂を使っている価値が最大に活かされていないというか、通常のアニメーションに抽象度が加わってしまうだけになってしまう気がした。作られていく過程も出来るだけ見せて欲しいと思ったのである。

※その際、寄席の”紙切り”は、その過程をずっと見ているからこそ最後に”おお”と沸けるんだろうねと話してくれた飯面氏。

アトリエに再び帰ってからは今回の「めぐりめぐる」の話をした。歌詞の中には”ぼく”や”君”といった言葉が出てくる。例えばその”君”が、男なのか女なのか、歌詞の世界だけでは分からない。飯面氏は女性だと思ったが、康成からそこは男性でやってくださいという話があったりした。
また飯面氏は、平面の物語の中に裏設定を設け立体感のある構成にするのがとても好きだという。そこは彼女自身の想像によるものなので、その辺りの話もした。

だが基本的には、僕たちは飯面氏に全て任せる。最低限固めておく所だけ固めておければ、後は自由にやってもらうのが一番良い。そうでないと、彼女にお願いしている意味が無いだろう。
アトリエを出たのは夜中、そこから僕たちは下北沢へ移動し、コインパーキングの車内で朝まで寝た。

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