「オペラ座の怪人」が終わったあと。舞台監督という役割

この企画に関わって、多くの学びがあった。音楽的な力をつけたという事は勿論の事だが、印象に残っているのは舞台監督と言う仕事についてだ。

今回の企画の舞台監督は、こちらも地元にゆかりのあるという乃村健一という方だった。本番前日まで一度も顔を見せなかったので、そういうものかも知れないけれど僕はこういう世界のことはよく知らないので、それってどうなんだと感じていた。
しかし会の成功にはこの人の力も多分に発揮されていた事を、終わってから知った。


例えば乃村氏は開演前になると、楽屋へアナウンスなどで連絡するのではなく実際に足を運び直接声をかけに行く。また本番前、舞台袖で思いつめたような顔をしている人がいれば、少し声をかけてあげる。開場の時間が近づいてくれば、入口の様子を伺いに行く。こうやって全て実際に足を運び、目で見て、人に触れて、その上で例えば時間を少し遅らせたりなど、裏方として全体を管理してくれていた。
僕は舞台監督は乃村氏しか知らないし一緒に仕事をさせてもらったのもこの人だけなので、同業者からすれば「そんなの当たり前」なのかも知れないけれど感銘を受けた。

上演中も勿論ステージ上の人間と常にアイコンタクトを図り呼吸を合わせる。起点をきかせる。そう言った意味で、例えば緞帳もスイッチで上下出来るものよりも、乃村氏はロープで上げ下げ出来るタイプ、ロープを引いた時にぐっと緞帳の重みが腕に感じられる方が良いと言う。


乃村氏の話を聞いていて、この人の話は全部人間的で血が通っているなと感じた。歌を聴かせるのも、サンドアートを見せるのも、照明をあてるのも、音楽を演奏するのもみんなそこにいる人間だ。当たり前のことだが、そういうことだ。あの日その全てが一つになり、多くの人たちを感動させることが出来た。
舞台監督と言う仕事は、とても深く、とても面白いと思った。

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