僕は今の仕事がら、カプチーノをつくったりコーヒーを淹れたりする。
その時に、「ミルクを上手くスチーム出来ない」「仕上がりが綺麗にならない」と言う事があり、周りにもそんな人がたくさんいる。恐らく世間でも、バールに立つ人でそう言う悩みを持つ人は多いだろう。
そんな人に、「いつも何ccのミルクでスチームしてるの?」「今スチームしたミルクは何℃なの?」といった事を聴いた時に、即答で答えが返ってくる事が果たしてどれだけあるだろうか。
「いつも280ccのミルクを使用しています」
「スチームは4秒泡入れしてから合計20秒攪拌し、温度は60℃でフィニッシュしています」
「エスプレッソはその時々のロットに合わせ、メッシュを最適に調整しクオリティの高い液体を抽出しています」
と言った事を言えることが前提であり、それさえないのであれば例えば「ラテアートが上手くならない」なんて相談に対するアドバイスを貰う資格は無いし、アドバイスをする方としても特に話すことは無いだろう。
表面的なものばかりを追いかけていてもその上へは行けない。目の前の事にどれだけ”執着”出来ているだろうか?
もっともっと深く。
分かりやすく言えば、一つは数値化だろう。
音楽の世界なら、全体のバランスで音が足りていないのは何Hzの帯域なのか。
ギター、ピアノ、ストリングス、ブラス、人の声、それぞれの周波数特性はどのようになっているのか。
シンセサイザーなんかに至っては、寿命が足りるだろうか。
松武秀樹さんの本の中で、梵鐘の音をシンセサイザーで完璧に作ってみなさいという話がある。
聴き込んでみると、初めから音が完全に消えるまで、様々な音が重なり合っていることが分かる。それらが順番に減衰し消えていき、最後にはある音のみが残っている状態になる。
そして執着とは、楽曲に対してもそうだろう。聴いた感じ、その感覚だけでは足りないように思う。自分はどの曲に対しても、その曲が生まれた瞬間からそばにいる。歌詞を書いた人もそばにいる。
もっと掘り下げて。難しいけれどそれはモノを創る上で、そして職人として必要な事だと思う。
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