この日は主に「危ない前提」のアレンジを行っていた。
この日一番の収穫は、”正しい音”で録らないと、正しいアレンジが出来ないと言う事だ。
何を今更と言った感じだが、事の流れを記しておこうと思う。
サビではずっと昔からオルガンを使っている。と言うか、動画でも分かるように僕がやっている仕事といえばほぼサビでのオルガンだけだ。
なので今回のこの曲に関するアレンジでも、当然真っ先にオルガンから録っていた。これまで使っていた音色だ。
しかし動画のようなライブではふんだんに空気感が盛り込まれるのだが、音源となるとデッドになる。なので音源では、空気感を足す目的でコーラスなども同時に加えた方がいいだろうという事になっていた。
そこで初めの構成ではまずオルガンがあり、その上に高いコーラスを置いていた。ヒューマン的なコーラスなのだが、全体のバランスと言う意味でのオルガンの上パートという事になるので、聴こえ方はどちらかと言うと高いpad系の音や、ストリングスのような聴こえ方に近い状態だった。
構成の意図は、オルガンだけではハイの帯域に聴きたくなる音が存在していなかったため、そこの場所でコーラスに空気感を作らせていた状態だ。
だがそこに少し違和感があった。そのコーラスの音自体が現段階でまだ良くないというのもあるが、もっとオルガン自体の音を見直したほうが良いのではないかと。
そこで自分たちの動画での聴こえ方を確認してみると、サビのオルガンはやはりかなりカリッと、高いところで聴こえている事に改めて気付いた。
オルガン音色の見直し
そこでオルガンの音を見直すことにした。後半のサビではそこに別のフレーズなども加わってきているので全体のバランスに影響してしまうが、やるべき見直しだ。
まずはもう一度ソフト音源で、いろいろなオルガンの音やそれをベースに少しいじりながら音の抜け方を確認していく。
現在使っている音源はAbleton liveに標準で入っているものや、オフィシャルサイトからダウンロードしたキーボード音源だ。
サラっと確認したがやはり同じような印象なので、次にハードのオルガンを使ってみた。YAMAHAのrefaceシリーズのYCだ。
ドローバーはもちろん、ディストーションやリバーブの掛かり具合を調節できる。ディストーションはMAXまでかけて、リバーブはOFF。コーラスやビブラートもかけられるが今回は音を抜きたいのでこちらもOFF。
レスリースピーカーの設定もあってかければ気持ち良いのだが、こちらもOFF。
5種類のオルガン音色を選べるようになっており、例えばHはハモンドだろう。YはYAMAHA、今回使ったのはVだが、恐らくVOXでは無いだろうか。
取説には、”60年代のトランジスタオルガン。矩形波に近い倍音成分を持ち、抜けの良い音が特徴”とあった。
これを、アレンジ途中の音源を常に流しながらYCの音色をいろいろセレクトして、その上でドローバーの調整を繰り返し、音源の中で抜ける音を作っていった。
そして出来上がった音色で録り直した結果、コーラスはオルガンより下で鳴らすことになったのだ。
音源で聴きたい欲求が起こるハイの部分はオルガンで足りたのだ。なので空気感はもっと、ちゃんとイメージ通りのコーラスらしい音色で加える事が出来る様になった。
それぞれが正しい持ち場で、正しい仕事に就いたと言う感覚だ。
これまでのオルガンの音色は、つまりイマイチ抜けきっていなかった。分かっていたのだが。しかしそれをベースに”足りないもの”、”必要なもの”を考えていた。
今回オルガンの音が抜けた結果、その”足りないもの”、”必要なもの”が変わったのだ。
これはとても怖いことで、良いものを作っていく上で過ちを生むのはもちろんの事、あと効率も非常に悪い。
あと例えば今回のケースで言えば、ソフトのオルガンの音とハードのオルガンの音、聴いた時の音量は同じでも、抜けてきてくれる音というのは実際はそんなに音量は出でいないのだ。
これも音源制作を進める上で大事なポイントだ。
有料の、オルガンに特化したプラグインであれば、今回と同等の結果が得られるのかもしれない。しかしハードの機材というものは、やはりソフト音源にはかなわない領域にあると感じてならない。
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