昔、家にあるYAMAHAのCP5の鍵盤が落ちてしまった時にサービスの方に修理しに来てもらった。その際に前々から疑問に思っていた事を聞いたことがある。
「ピアノの調律って、ドの音もレの音も全て決まっているのだから、誰がやっても同じではないのか?」と。するとその方は教えてくれた。
「知り合いに、海外から来たピアニストに引っ張りダコの調律師がいる。その人は、ピアニストが求めてくる”もう少しキラッとした響きに”とか”この曲のこの時、もっと説得力が欲しい”などといった非常に抽象的な要求を正確に理解し、再現する。」と。
なるほどなぁと思うしかなかった。
そんな話を練習の日康成とtomoco.Kの3人でいる時に話していると、康成はその話には大切な要素が二つ含まれていると言う。
一つはシンプルに、要望に答えられるだけの技術を持ち合わせている点。
そしてもう一つ、相手の要望を聞き入れている点。
どんな仕事においてもそうなんだろうが、相手の要求を否定しない。とても大事なことだ。
レッスンにしてもそう。曲のアレンジにしてもそう。
例えばPAなんかでもそう。
演者が「リバーブもっと上げて欲しい」と言う注文をするケースはよくあるが、「無理ですね」と言うPAもいれば、「分かりました」と返すPAもいる。
「リバーブもっと上げて欲しい」
「分かりましたやってみましょう」←これが大事。
「その代わりこれ以上上げるとハウるんで、そこまでは上げますね」(更に危ないポイントだけ切っておいたり)などと言う会話がなされる。
なんだか職人と呼ばれる類の人は勘違いをしている人が多い気がするが、もしも依頼者の要望を突っぱねているのであればそれはプライドでも何でもない、ただあんたの実力がないだけだよ。
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