前回記事で、2019年夏に僕たちが飯面氏に会いに東京まで出向いた話を書いたが(「めぐりめぐる」music videoが出来るまで~その1~おまけ)、これらは分ければ「東京編」で、動画の完成までにもう何度か飯面氏と僕たちは会っている。同年9月3日、飯面氏が仕事で関西へ来られる際に連絡をくれ、その仕事の後に京都駅界隈でお会いした。その時ようやくtomoco.Kを含めた3人全員で再会する事が出来た。
期間限定でやっている屋台村「 崇仁新町 」へ4人で向かい、席をとって適当に自分たちで食べ物や飲み物を買ってきて、みんなで食べる。特に作品に関する相談という事ではなく、関西へ遊びに来られた飯面氏と一緒にご飯を食べたという感じで、特にtomoco.Kとは飯面氏も楽しそうに話していた。自身のポストカードやお店で買った面白いシール、後は横浜のお菓子などのお土産を沢山持ってきてくれて、とても気遣ってくれていた。
この時、基本的にはたわいもないお喋りが中心ではあったが、作品に関しては一旦の期限を儲させてもらう話をした。と言うのも、僕たちは毎年tomoco.Kのライフワークである、大阪島本町にある水上隣保館と言う孤児院でのチャリティーイベントを行っているのだが、そこで上映会を行いたいというアイディアを提示したのである。更にはそこに飯面氏も招待し、ちょっとしたトークライブも挟みたいと。こういった明確な期限があった方が本人自身も進めていきやすいと言う事で、その件も承諾して頂きこの日は解散した。
2019年10月19日、ようやく完成形として見ることの出来る動画が送られてきた。 因みにチャリティーイベントは10月21日である。上映込みで構成も考えているためヒヤヒヤしながらも、しかし信じていた。実際編集を含め、飯面氏は奮闘してくれていた。
この段階では映像作品としてまだ何点か課題点は見られた。ここのシーンがどうしても分かりにくい、ここは意図とは違った伝わり方をするかもしれない。そう言う箇所は多少あったものの、9割以上はもう出来上がっていると言えるものを飯面氏は送ってくれていた。 出来上がっているというか、殆どの部分はもう既に素晴らしかった。
例えば2:15辺りの映像は深い海の底へと沈んでいくシーンだが、これは僕たちが東京へ行った時点で既に飯面氏が構想に持っていたシーン。また3:30辺りから始まる描写も、一番初めの段階から飯面氏がはっきりとイメージしてくれていた場面だ。この時点の動画で既に今と変わることなく描いてくれていた。殆ど口出しはしていない。飯面氏が感じ取ったものを反映してもらっている。後半に出てくる女性も、歌詞には出てこない。飯面氏が含ませた裏設定である。
10月21日、チャリティーイベントは無事開催され動画の上映もでき、その後に飯面氏と康成、tomoco.Kによるトークライブも行えた。会が終わった後はいつも打ち上げをしているので、今回は勿論そこに飯面氏もお呼びした。彼女は基本的には明朗な方で、なにより良く喋る。初対面の人たちとも打ち解け、いろんなテーマでみんな楽しく話をした。
翌日も飯面氏は京都に滞在しその後関東へ帰るという流れであったため、その日の夜僕と康成は、3人で動画の内容について細かな話をしている。この時は京都駅近辺のガストだった。今回の作品の中で飯面氏がやりたい事、譲れない部分、自分たちの考え、何点かの課題点について、そういったものを沢山出し合った。動画が完成するまでに会ったのはこれが最後となる。
飯面氏はこちらが作品に対して何か指摘をすると、少し寂しそうな顔をする。それは自分の意見が通らないから不満とかそういうたぐいの物ではなく、自分の大好きなものなのに・・・という風な感じだ。彼女がこの曲を自分の中で大事に大事に熟成させてくれた事がとても伝わってくる。
彼女は頭のてっぺんから足の先まで芸術家だが、漫画に出てくるガチガチの陶芸家のような人では全くない。作品のメッセージを奥底まで汲み取り、自分から湧き出るたくさんのイメージでその作品に飾りつけをし、こちらとコミュニケーションを図ってくれる。とても素敵な人だった。
飯面氏が東京へ帰ってからは、康成とのやり取りが始まる。この時点では字幕もまだ入っていない。どういう自体で、色は、大きさは、自分たちで入れるか、それも作品の一部だから入れて貰う方が言いか。 そういった事も全て自分たちで考え、飯面氏とコンタクトを取り、また期間が空き、こういった事を何度も何度も繰り返し、2020年2月に、不意に最終稿が届いた。その後直ぐに動画はyoutubeにアップされた。
僕たちがまず東京へ会いに行っていなければ、作品の内容も、完成時期も、恐らく全ては変わっていたと思う。昔は電話か手紙か直接会う以外にない。今はメールで、一切お互いの声を聞かず、顔も見ず進めることができる。何ならメールだって筆跡がわからないから、本人が書いていないかもしれない。
こんな時代だからこそ、みんな便利な方のツールを使うからこそ、僕たちは血の通った交流をこれからも大切にしていきたい。
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