youtubeにMVを投稿するに至るまで②

2017年冬も終わり春が来て、「氷」を採用したMVが撮れなくなると同時に自分たちが持つべきMVの再考に切り替わっていく。そして何なら、その間に新しい曲も出来てくる。常に選択肢は3~5曲の間で、大阪へ練習に行くまでの道中や帰ってからも時にはコンビニの駐車場で暫く話し合い、ああでもないこうでもないを繰り返していた。

そのうちに次に有力な候補に上がり始めたのが「手」だった。かなり初期の曲で、始め考えていた「氷」はラブソングの類だったが、こちらは自分たちらしい、メッセージ性に富んだ曲だ。


初めからMVに対して重要だと考えていた点は、”自分たちは登場しない”という事だった。厳密に言えば自分たちが出るのなら、無名な自分たちが出る事による大きなメリットが無ければならない。何故か多くのアマチュアバンドはやるのだが、誰の曲やねんって言う無名のバンドの曲に、お前ら誰やねんってしかもそんなに美男美女でもない連中が出てくる動画。そこからは何も生まれないでしょうと言う考えだ。だから前提として、”映像作品”としてそれだけで求心力のあるものになっている事、この点をとても意識していた。

そこでいろんな映像を見たりしている中で圧倒的な力を持っている被写体があった。岩手県にある「松尾鉱山」である。松尾鉱山は調べれば一目瞭然だが、分かりやすく例えれば軍艦島みたいなものだ。当時鉱山として栄えたその一帯は完全に一つの都市として完結出来ており、住まい、学校、レジャー、クリーニング屋など、山の中だがそこだけで全ての生活が成り立つまでに発展していた。

そのような一つの都市から全ての人が去り、全てが完全に廃墟となっているのである。そんな松尾鉱山をドローンで撮影している映像がyoutubeにいくつか投稿されているのだが、そんな映像に「手」を流しながら視聴するととてもマッチする。楽曲のチョイス的にも自分たちの看板として見た時に外れておらず、しかも今度はモデルに人を使わないので、季節的な問題さえ被らなければいつだって撮影可能という好条件だった。
問題は、撮影しても法的に大丈夫なのか。持ち主は誰なのか。そこだけ明確にしておく必要があった。

その点に関しての結論はというと、”持ち主不明”。多くの人がかんでいたり、亡くなられていたり、譲渡されていたりを繰り返しているらしく、現在は一応県が管理はしているが立ち入りを禁止する権限もないので、近づくなら自己責任でと言う感じだった。

と言うわけで康成と僕は同年夏、”下見”をしに岩手県まで車を走らせた。

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